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February 17, 2006

10年前の内閣法改正で総理大臣は大統領になった

日下公人:10年前の内閣法改正で総理大臣は大統領になった - nikkeibp.jp - 企業・経営
 「意」がある政策を行うことを「プラグマティズム」という。「アカデミズム」ではない。世界中を見渡して、プラグマティズムの国はアメリカと日本だ。イギリスはノーベル賞をとるが、それはアカデミズム。アカデミズムでは飯を食えない。あまり人も尊敬してくれない。香港より、シンガポールより貧乏だ。優秀なイギリス人はみんなアメリカへ行ってしまう。
 そうした中で大学改革が始まって、「それでどうでしたか」と聞いたら、実は東京大学の教授たちの「意」はアカデミズムにも向かっていない。でもプラグマティズムは嫌いだ。結局どこへ向かっているかというと、派閥をつくって予算を取るとか、派閥をつくって誰かを除外するとか。そんなところにばかり「意」が寄っているという。もしこれが本当だとすれば、今に東京大学はつぶれてなくなる。他の大学が買いにくる。
 昔、東大を全部まとめて、誰が一番高値で買ってくれるかという議論をしたことがあるが、それは東海大学じゃないかという結論だった。そのときの入札の条件として、東京大学という名前は残るのだろう。「東海大学本郷分校」となると、値段が下がるんじゃないかとね。では、今いる教授たちはみんなくっついてくるのか。それでは値段は暴落するだろう、とかね。
 小泉改革はもう「行政改革法」という法律に移ってきている。これにはすごいことがいっぱい書いてあるのだが、この「官庁作文」をリテラシーがある人が読むと、見事に骨が抜けている。でも精神や方向を示すという点では堂々の法案で、これが間もなく出てきて、それは通るだろう。なぜなら昨年の総選挙で国民が支持したことだから。
 その中に「公務員制度改革」というのがある。「公務員がいうことを聞かない、ではどうすればいいんだ」という法律だ。国民の声は、「そんなのは要らないから、もう辞めてくれ」というわけだ。実は国民はそんなことはいっていないのだが。国民は「適材適所で再配置したら」と言っている。「民間でもできる仕事があるんだから」と。


 在任中に橋本さんは、内閣法改正をやった。ただ法律を改正した。内閣法というものを強化して、その前にあった次官会議というのを廃止した。これは手続きを決めた法律で、その後にものすごく効果があった。
 内閣が閣議にかけたり、大臣がサインしたりするものは、かつては全部、次官会議で決まったものしか上がってこなかった。その次官会議を取り仕切っているのは大蔵省(現・財務省)。例えば、総理大臣が「こうやりたい」というのを郵政大臣に命令して、郵政大臣は少しやるけれど、次官会議を通らなければダメだったのだ。
 次官会議には、例えば通産次官がいて、郵政省だけが得することは許せない。「通産にも何か得を寄こせ」というようなことをいう。それを全部まとめるのが大蔵省の次官。大蔵省は予算を持っているから、みんなに損と得とを配って全体をまとめる。そうしてまとまったものを橋本首相のところへ、「次官会議でこう決まりましたから、大臣の皆様、ひとつこれでサインしてください」といって持ってくる。
 だから橋本さんは各大臣なんかどうでもよくて、大蔵大臣、ひいては大蔵次官だけが頼りなのだ。大蔵大臣が次官に頼むと、次官が「じゃあ、やってあげます。その代わり私の天下りはよろしく」と。
 そういうふうに癒着してきたのをつぶすのが一番大事だと、内閣法を改正して、すべてなくなったのだ。だから、本来なら大蔵省は「まとめ役」を降りたはずなのだが、実際は今もまだやっている。ということは、行政改革は未完なのだが、法律的にはちゃんと成立している。その結果、総理大臣は今や独裁者になれる……。「今や」ではなくて、実は10年前からなれるような法律改正はもう済んでいるわけだ。
 つまり法律的には、首相はもう大統領になっているのだ。内閣法に書いてあるとおりにやれば、総理大臣はすべて行える。小泉首相の前から、すでにそうなっているのだ。小泉首相が特別変わっているというわけではなく、もう法律はそういうふうにできてしまっているのだ。

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