March 11, 2006

誓約書を書かせた人が改良するんですよね。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <ウィニー>開発の元東大助手「改良は容易」 京都地裁公判
 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」開発で映像データなどの違法コピーを助長したとして、著作権法違反のほう助罪に問われた元東京大助手、金子勇被告(35)=東京都=の第20回公判が9日、京都地裁(氷室眞裁判長)であった。自衛隊や警察などからウィニーを媒介とした内部情報流出が相次ぐ問題について、金子被告は「(流出拡大を)防ぐ改良は容易にできる」と述べる一方、京都府警に止められているとの趣旨の発言をした。
 この日の被告人質問で、最近の情報流出問題について弁護側に聞かれ、「本質的には情報を(私用パソコンに移すなど)外部に持ち出すことが問題で、ウィニーとは全く関係ない。ウィニーでは他の人も情報を共有できるため、漏れた時の発見が容易になる」と発言。流出拡大を防ぐ改良については「積極的にやりたいが、(バージョンアップはしないと府警と約束しており)また罪に問われる可能性がある」と述べた。
 弁護側もこの日の弁論で「保釈取り消しや新たに事件となることを恐れ、ウイルス対策ができない」と主張した。
 金子被告は府警の家宅捜索を受けた03年11月、「改良などの開発を今後はしない」との誓約書を提出させられている。
 金子被告によると、改良とは、問題あるファイルが流出した際、そのファイルを特定して流通を止める技術。第17回公判(05年11月)でも「特許を出願中だが、ウィニーでは警察との約束でできない」と述べていた。

February 21, 2006

通信と放送の融合に著作権法の改正も検討

通信と放送の融合に著作権法の改正も検討を - 知財本部が提言 (MYCOM PC WEB)
 政府の知的財産戦略本部は、コンテンツ専門調査会の第7回会合を開き、「デジタルコンテンツの振興戦略」についてとりまとめた。同戦略では、3つの目標と11の提言を掲げ、その中で、通信と放送の融合に向け、ブロードバンド放送(IPマルチキャスト放送)を活用するために著作権法の改正も含めた必要な措置を速やかに講じることを提言している。
 知財本部では、「日本を世界トップクラスのデジタルコンテンツ大国にする」という基本目標の下に、(1)ユーザーが多様な種類と価格のコンテンツを選択できるユーザー大国の実現(2)クリエーターが適正なリターンを得ながら、最大限に能力を発揮できるようにするクリエーター大国の実現(3)経営の近代化・国際化を図り、国際競争力をつけて産業規模を大きくするビジネス大国の実現――という3つの目標を掲げて、国の政策や民間の活動について「抜本的な改革が必要」としている。
 具体的な方策については「改革は民が主体・官は阻害要因を排除」という位置づけから11の提言が挙げられている。提言1では、放送と通信の融合の観点からIPマルチキャスト放送を積極的に活用するため、「著作権法上の取り扱いを早期に明確化し、法改正を含め必要な措置を速やかに講ずる」としている。
 また過去に放映されたテレビ番組について、インターネットでも視聴したいというニーズがあることから、過去に作られたコンテンツをテレビ以外でも二次的に利用できるようにするため、著作権契約上の課題を解決する取り組みを進めることも提言しているほか、契約時にインターネットでの利用も視野に入れた契約条項を設けることが有益で、その契約書のひな形の作成・公表などを業界に求める。業界では、映像コンテンツのブロードバンド配信の使用料目安が暫定合意されているが、このような二次利用におけるルール作りに関する取り組みを促進する。


 現行制度では、テレビ放送(生放送を除く)に関しては著作隣接権を持つ歌手・俳優などの「実演家」やレコード会社などに許諾を得る必要はなく、放送後に使用料を支払うだけでいいが、インターネットでの配信では、事前に実演家やレコード会社などへ個別の了解が必要となっている。これはテレビ放送が著作権法上「放送」として扱われ、IPマルチキャスト放送は「自動公衆送信」(通信)と扱われているからだ。しかし、地上デジタル放送の難視聴地域対策としてもIPマルチキャスト放送を期待する考え方もあり、著作権の手続きの簡素化が求められていた。
 これに関しては、今月に入って文化庁や竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」が、相次いで著作権法を見直し、著作権の手続きを「放送」並みに簡素化する方向で結論を出しており、知財本部も複数の提言でIPマルチキャスト放送について触れ、著作権法改正も視野に入れて積極的にIPマルチキャスト放送の普及を目指す考えを示した。
 ただ、通信と放送の融合に関しては権利団体らからの反発も招いており、調査会委員からも「コンテンツホルダーの意見が反映されていない。著作権者、著作隣接権者に対する意見集約を行うべき」(小学館・久保雅一委員)という意見も出されている。文化庁の計画では、文部科学相の諮問機関である文化審議会で今夏までに結論を出し、2007年の通常国会での改正案提出を目指す。
 著作権に関しては私的録音・録画の抜本的な見直しも提言。現在は、音楽・映像の録音や録画に関しては、私的利用に限り一定の補償金を支払うことで可能になっていたが、iPodに代表されるデジタルオーディオプレイヤーの普及などで制度自体の見直しの気運が高まっている。提言では補償金制度の廃止も視野に入れて抜本的な検討を行い、2007年度中には一定の具体的結論を得るよう提言している。これに関しては、技術的保護手段との関係もふまえた上で私的複製の範囲を明確化、使用料と複製対価との関係を整理して著作権契約も見直すとともに、オンライン配信への移行もふまえた音楽関連産業のあり方についての検討にまで話を広げている。

February 18, 2006

Winny裁判:村井教授が証言。検察側主張に異議

Impress:Winny開発者の裁判に村井教授が証人として出廷、検察側の主張に異議
 京都地方裁判所で16日、ファイル交換ソフト「Winny」を開発した金子勇氏が著作権法違反幇助の罪にあたるとして争われている裁判の第19回公判が開かれた。公判には弁護側の証人として慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏が出廷し、弁護人からの質問に答える形で証言を行なった。
 村井氏はWinnyについて「2002年5月頃に、学生や同僚の研究者から話を聞いて知った」と証言。Winnyの特徴を「P2Pのコンセプトに基づいて、ファイルを共有するソフトだと理解した。ファイルを発見して共有する性能が優れており、中央のサーバーを持たない純粋のP2P型ソフト」だとした。
 実際にWinnyを研究室で実験として動作させたこともあり、感想としては「洗練された技術が用いられていると思った」という。また、ネットワークアーキテクチャに関する大学の講義の中でもWinnyを題材として取り上げたことを紹介。インターネット上での共有のメカニズムでは、規模が大きくなるにつれて新しい技術を導入していく必要があり、Winnyの技術には学術的な意義が含まれていると考えたことから、講義の中で紹介したと述べた。
 金子氏の著書「Winnyの技術」も読んだことがあるとして、著書の中で解説されている階層化ネットワーク、クラスタ化、キャッシュなどの各技術について、どのように思うかという意見も披露。こうした技術はいずれもインターネット上のアプリケーションで利用されている技術であり、かつWinnyではファイル共有の効率を向上させるためにこれらの技術を洗練された形で使用していると述べた。
 キャッシュの仕組みについては、CPU内部からネットワークまで、デジタル情報が移動する際には幅広く使われている技術であると説明。また、中継技術についても、インターネットそのものが中継で成り立っているシステムであり、Winnyはインターネットの上に作られているオーバーレイネットワークである以上、中継を行なうことは合理的であると述べた。
 さらに匿名性について、情報システムにおいては匿名性の確保は追及すべき重要性の高い技術だと説明。プライバシーの保護や、電子投票のシステムなどを考える上で、どのように匿名性を担保するのかといった研究は広く行なわれているとした。
 Winnyが他のファイル共有ソフトに比べて優れている点としては、大規模な共有のための性能に関する洗練された技術が用いられており、優秀なアプリケーションが用いられることでネットワーク全体の性能が上がることになると説明。こうした技術はファイル共有にしか使えない技術であるかという質問に対しては否定し、SkypeのようなP2P技術を用いたインターネット電話などでも、性能を上げるための技術として必要だと述べた。


● 「著作権法違反行為を助長する目的で開発」とする検察側の主張に異議
 弁護人は続いて、検察側の「金子氏が著作権法違反行為を助長する意図を持ってWinnyを開発した」という主張に関して、村井氏に意見を求めた。
 村井氏は「効率の良い情報共有のメカニズムが、著作権法違反行為を助長させることに結び付くということは理解できない」と主張。検察側が、キャッシュやクラスタ化などのWinnyの個別の機能について、著作権法違反行為を助長させる目的を持って搭載されたものだと主張していることをどう思うかという質問に対して、これらの技術は「ネットワークの効率を上げるための洗練された技法であり、これを利用の目的と結び付けて考えるのは理解できない」と述べた。
 また、弁護人からの「検察側は、金子氏がユーザーの要望を聞き入れ、バージョンアップを繰り返したという開発手法も問題視しているようだが、これについてどう思うか」という問いに対しては、「こうした開発手法は一般的なものであり、優れたソフトウェアはユーザーからの要望を聞いてバージョンアップを繰り返すものだ」と答えた。
 金子氏が逮捕・起訴されたことで影響があったかという問いに対しては、「P2Pは大事な概念だが、その研究開発にブレーキがかかったと思う」として、逮捕を受けて公開を中止したP2Pソフトがあることなどについて残念に思っていると述べた。今回の事件に対しては「情報通信の基盤を開発することと、それがどう利用されたかを結び付けて考えられるべきではない。開発すること、運用すること、それがどのように利用されるかということは、分けて考えるべきだ」と語った。
 また、検察側が提出した証拠のうち、京都府警がWinnyを使ったファイル交換の実験を行なった際の説明図についても、村井氏に対して質問が行なわれた。図版には、ルータの内側のネットワークではプライベートアドレスを利用するように書かれているが、実験を行なったというPCにはグローバルアドレスが割り当てられているように書かれており、これではインターネットには接続できず、書かれているIPアドレスやセグメントが間違っていると指摘した。


● 検察側からも村井氏に対して質問
 続いて検察側からも、村井氏に対して質問が行なわれた。Winnyの実験をどのように行なったのかという問いには、ダウンロードを2〜3回行ない、実験用のファイルを利用したと説明。現在Winnyを使っているかという問いには、使っていないとし、その理由については必要がないためと回答した。
 Winnyが日本の社会でどのように利用されているかを知っているかという問いには、「さまざまなファイルの共有に利用されていると理解している」と回答。Winnyに関して様々な雑誌や書籍が販売されているが、そこではどのような紹介のされかたをしているかという質問に対して、「『悪用厳禁ツール』といった紹介のされかたをしている」と答えた。
 また、証言の中で、慶応義塾大学では現在はWinnyの利用に際して申請が必要となっていると述べたことに対して説明を求められたのに対し、「著作権団体から要請が来たため、利用目的などを確認するために申請を求めるようにした」と説明。こうした措置を開始した時期については正確には覚えていないとしながらも、今回の事件が直接の原因ではなく、それ以前に著作権団体から要請があったと思うと答えた。
 村井氏の証言の後、弁護側からは検察側の調書などが証拠として採用されたことについて異議が申し立てられた。弁護側は、調書は被告人が法律に無知であることにつけこみ、被告人が述べるはずのない文言が用いられるなど、供述調書とは呼べないものであると主張。裁判所がこれらを証拠として採用したことは不適当であり、再検討を求めるとしたが、裁判所側は異議は理由がないものとして棄却。次回公判の予定日(3月9日)などを確認して公判は終了した。