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January 26, 2006

松下電器温風機リコール事件浮き彫りになった消費者政策と情報政策の隙間

個人情報漏えい事件を斬る(27):松下電器温風機リコール事件浮き彫りになった消費者政策と情報政策の隙間:IT Pro
 2005年11月21日,経済産業省は「情報セキュリティガバナンスシンポジウム」の開催についてという案内告知を発表した(所管は商務情報政策局情報セキュリティ政策室)。経済産業省は情報セキュリティガバナンスを,「社会的責任にも配慮したコーポレート・ガバナンスと,それを支えるメカニズムである内部統制の仕組みを,情報セキュリティの観点から企業内に構築・運用すること」と位置付けて,その普及に取り組んでいる。2005年12月9日に開催された同シンポジウムでは,先進企業の取り組み事例などが紹介された。その中には松下電器の名前もあった。
 一方,リコール対象の温風機に起因する死亡事故が長野県で発生したのも11月21日である。29日に経済産業省(所管は商務情報政策局消費経済部製品安全課)が「消費生活用製品安全法第82条に基づく緊急命令」を発動し,翌30日に松下電器は社長直轄の緊急対策本部を立ち上げた。そして,中村社長が「情報経路に不備があった」ことを認め「年内に10万人を投入し特定をめざす」と語ったのは,12月9日のことだった。
 2005年11月下旬から暮れにかけての経済産業省の動きをみる限り,松下電器の事件について,消費者政策を所管する消費経済部製品安全課と情報政策を所管する情報セキュリティ政策室の間で連携があった様子は感じられない。松下電器の場合,製品安全に関わる家電部門と個人情報保護対策に関わる情報セキュリティ部門の間にコミュニケーションの隙間があり,それを埋められなかったことが大きな問題となった。同じようなことは,所管する行政機関の内部になかったのだろうか。
 今回の事件を通じて,長期間使われている家電製品の安全性をどう確保するかが課題として浮かび上がっている。こうした中,2006年1月15日付の毎日新聞で,経済産業省が家電製品の安全性向上のため,電気用品安全法など関連法令を改正する方向で検討に入ったことが報じられた。購入から一定期間が経つと製品が作動しなくなる「タイムスタンプ」機能を製品に付け,消費者に定期点検を促す案,製品販売時に購入者の氏名をメーカーの名簿に登録し,一定期間後にはがきなどで点検を呼びかける案などが浮上しているという。さらに,メーカーが製品を回収する時は国への報告を義務化する,製品トラブルに関する情報収集のための窓口を経済産業省内に設けるなどの検討を進めているという。
 メーカーとしては,消費者安全の観点から,購入した顧客の個人情報管理態勢のあり方を見直す必要が出てくる。これは,中堅中小企業(SMB)のサプライヤや販売会社の個人情報保護対策にも大きな影響を及ぼすことになる。また,家電製品でこのような動きが起きれば,他の消費財にも広がる可能性がある。中堅中小企業の場合,経済産業省の下に中小企業庁がある。どのような形で中堅中小企業の個人情報保護対策を調整・推進するのかは気になるところである。

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