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March 18, 2006

携帯電話事業への参入で、橋頭堡得たソフトバンク

携帯電話事業への参入で、橋頭堡得たソフトバンク (MYCOM PC WEB)
ソフトバンクが英Vodafone Groupの日本法人(以下、ボーダフォン)を買収することが正式に決まった。「これで携帯電話事業に、早期に本格参入できる」(孫正義ソフトバンク社長)こととなった。ソフトバンクは今回、ヤフーと事業提携することも発表。「Yahoo!JAPAN」のコンテンツ、サービスの全面的な提供を受け、これらを大きな武器としてNTTドコモ・KDDIの先行2社の追撃を図る。そのほか、英Vodafone Groupと共同出資のベンチャーを設立することも検討していく方針だ。「ボーダフォン」ブランドは半年〜1年をめどに刷新される。
 当初ソフトバンクは携帯電話事業への参入にあたり、基地局など通信基盤の整備を自前で整備する意向を示していた。後にボーダフォンの設備を借り受けるMVNO方式の模索を始め、結果的には既存事業者ボーダフォンの買収に帰結したわけだが、この買収は非常に大きな利点をもたらす。
 ボーダフォンは現在、国内で1,514万ユーザーを擁し、ネットワークの人口カバー率は99%以上だ。さらに優位性が高い点としては、端末の調達が挙げられる。孫社長は「新規であれば(最初は)ユーザーが少ないため、端末を製造してくれる企業も少なくなる。1,500万ユーザーの基盤を得たことで、メーカーと交渉しやすくなったのは重要な要素の一つ」と話す。
 ヤフーの井上雅博社長は「インターネットはまだまだ多くの潜在力をもっているが、いまのインターネットは主にPCでの利用だ。人がいるさまざまな場所・時間・状況で、色々なツールを用いてインターネットにアクセスできるようになれば、一人一人のユーザーにとってより便利になる。ヤフーはそういうものに挑戦していきたい。これまで(携帯電話での)インターネット利用はキャリアに依存する面が強く、本来のオープン性を享受できていなかった。今回、よりキャリアに近い立場でサービス提供できる機会を得た」と述べ、新たなコンテンツ施策を構想していることを窺わせた。
 現在、ボーダフォンは業界3位でシェアは16%だ。NTTドコモは53%、KDDIは26%で、差が広がっている。この状況について孫社長は、つながりにくい場所を解消するためのネットワーク強化、コンテンツの拡充、営業体制の確立、端末の品揃えを挙げ、この4点を改善すれば上位2社を追いかける態勢は整うとの見解を示した。「5年、10年先をみながら経営を考えているが、10年スパンでいえば3位で終わる気はさらさらない」としている。
 今回のボーダフォン買収にかかる費用は1兆7,500億円で、これまでにほとんど例のない巨額の資金を必要とする。ソフトバンクはADSLなどブロードバンド事業への先行投資がかさみ、経営を圧迫してきたが、同事業がようやく収益を生み出すようになり、2006年3月期には5年ぶりに黒字決算に転じる。赤字決算が続いたことについては、株主から批判されていた。
 こうしたなか、同社としては、携帯電話事業参入のための投資が経営に大きく影響する事態は回避したいという意向があったとみられる。そこで今回の買収では、ソフトバンクが設立する子会社を通じてLBO(Leveraged Buy-Out)を行い、1兆1,000億〜1兆2,000億円を調達する。買収先企業の資産を担保に資金を借り入れ、企業を買収する手法だ。ソフトバンク本体は2,000億円、ヤフーは1,200億円を出資する。
 さらにこの場合、金融機関からの資金調達はノンリコースローン(Nonrecourse Loan)と呼ばれる方式を採用した。これは、資金を借りた側が返済できなくなったとしても、担保となっている資産以外には返済責任の及ばない融資のことだ。孫社長は「ノンリコースは、ソフトバンク株主からみれば財務リスクを遮断できる」と指摘した。
 一方ソフトバンクは、新規事業者として昨年11月に総務省から1.7GHz帯の周波数割り当てを受けている。業界内からは、同社がボーダフォンを買収するなら返上すべき、との声も上がっているが、孫社長は「今後、我々が新規としての側面を残すか、完全な既存事業者になるのか――総務省と相談して、しかるべき道を検討する」と語り、どのような決断を下すのか明言は避けた。ただ孫社長は「既存事業者とのイコールフッティング(平等な競争条件)の点で、NTTドコモ・KDDIに比べて今後の高速データサービスをやるための十分な周波数はあるのか、そのあたりも議論して検討・相談していきたい」と付け加えた。
 ソフトバンクは、2004年に800MHz帯の周波数での携帯電話事業参入を表明した。同社は、新規事業者への800MHz帯の割り当てを強く要求、総務省・NTTドコモ・KDDIと激しく論争したが、これは実現しなかった。それでも新規事業者として既存3社に挑む、との段階にまで漕ぎ着けたところだったが、ボーダフォン買収により、その立場は大きく変わることとなる。いよいよ今年は番号ポータビリティが始まるが、これまでの流れでは音声通話まで含めた本格的なサービスで、既存と新規が競い合いをはじめるのは来年以降になるはずだった。既存事業者のある幹部は「新規にはそう簡単に負けない」と自信を示していたが、これで最初から、いわば、新規ならぬ新規となったソフトバンクが、上位2社と激突することになる。孫社長は、かつてADSLで仕掛けたような低価格化策を打ち出すのかどうかについては、今回一切言及しなかった。料金・端末・コンテンツ、同社の戦略の骨格が現れるのはもう少し先になる。

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